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【9月第2週】季節の野菜の名残惜しさ

 夏野菜が少しずつ終わりを迎えています。朝晩の暑さが和らいで、日中の柔らかな風が身体を包むと、なんだか物悲しさを覚えます。季節の変わり目というのは気持ちが落ち着きませんが、夏から秋にかけては特に顕著なようです。

 以前、夏真っ盛りの時期に学生さんが農場見学に来られました。その際に「生産者の方は野菜をたくさん食べるんですか」という質問がありました。私は次のように答えました。
「たくさん食べますよ。今はキュウリとナスばかり食べています。キュウリは8月、ナスは10月で終わりなので、最後の一個を食べる時には感慨深いですよ。次に食べるのはまた来年ですから。」この返答に学生さんは不思議そうな顔つきをしていました。畑の野菜だけしか食べないと、その時期に取れるものしか食べることはありません。すると、今年はもうキュウリとはお別れです。

 「旬の野菜はおいしい」と言われますが、その実感は人によって様々だと思います。料理屋さんに行って旬の食材を使った品を楽しむ方もいれば、直売所に行って旬野菜を買い楽しむ方もおられるでしょう。生産者にも旬野菜のおいしさについての実感があります。

 種類にもよりますが、生産者は同じ場所でとれる野菜を「定点観測」のようにしてほぼ毎日食べます。例えば今年のキュウリは6月初めから取れ始め、8月いっぱいまで収穫していましたので、2、3ヶ月は食べていたと思います。6月は若々しくエネルギーに溢れフレッシュですが、8月も後半になると味がさっぱりしてきます。どの時期にも、その時期なりのおいしさがあります。

 およそどんな野菜でも、株の生育段階や生育の様子、気象条件などによって味が違ってくるのがわかります。同じ場所で野菜を定点観測していると、時期に応じてそれぞれの表情を感じられるので、なかなか味わい深いものです。家庭菜園をしている人も同じように感じるかもしれませんね。

 キュウリの収穫がなくなると夏の終わりを感じます。春の桜の散り際や、夏の花火、秋の紅葉など、どの季節でも、何か名残惜しい気持ちというのはあるでしょう。それと似たような心持ちを、どの野菜に対しても感じることができたら良いのになと思うことがあります。

 そうした名残惜しい気持ち、感謝の気持ちを野菜に抱くことができたら、「今年も旬の野菜を味わえた」と、よりそういう実感が持てるのではないかと考えています。