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ヨーロッパの有機農業から学んだこと

 自然が相手の農業は思いどおりにいかないことが多々あります。有機農業はなおさらです。だから、「なぜ自分は有機農業に取り組んでいるか」を何度も何度も考えます。

そんな時に思い出すのが、スルガ銀行の助成事業で行かせていただいたヨーロッパの環境保全型農業の視察です。

ライン川、古城の下にはブドウ畑が広がる。(2002年)

 研修を通じて強く感じたのは、日本とヨーロッパでは有機農業の捉え方が異なるということでした。

日本の有機農業は無農薬で味が良いことを目的としていますが、ヨーロッパの有機農業は「環境保全のために持続的な生産が行われること」が目的です。

その土地が本来持っている力で作物が作られていることが重要で、味が良いことは目的ではなく結果です。

110ヘクタールの農場でジャガイモ、アスパラ、ルバーブ、ラデッシュを六圃制の輪作で有機栽培している。地力を高めるためにクローバーやエンドウ豆のマメ科植物を使っている。歴史の授業でヨーロッパの三圃制を学習したが、それが過去ではなく今でも行われていることに驚いた。

 ドイツのスーパーでは主食のジャガイモが、有機のものは値段が7倍もしていました。

「それだけ高いのは、美味しいからですか?」と聞いたところ、「必ずしもそうではない」との答え。それでも購入する人々がいるのは、「外部の力を借りないで、その土地が持っている最大限の力を引き出して育った魅力」が有機農産物にあるからです。

 最初は理解できなかったのですが、高校野球に例えてみると、何となく腑に落ちました。

優秀な選手が恵まれた環境で練習をしているチームは強くて見ていて楽しいし魅力があります。

しかし、小さい時から知っている地域の子供たちが、与えられた練習環境の中で、自分たちの力の限り一生懸命に取り組んでいるチームにも魅力があります。そんなチームだからこそもらえる勇気や元気があります。

ドイツ人の主食はジャガイモ。有機ジャガイモの値段は7倍、その理由は自分たちの環境を守っているから。

 農薬と化学肥料を使わないで育てることは有機農業の手段であって本質ではありません。

有機農業の本質は「その土地の光と水と空気で、その土地が持っている最大限の力を引き出して育ったという魅力」です。

生産者が有機農業に惹かれるのも、この農法に「人の生き方の原点」を感じているからではないかと思いました。

 私が目指しているのはそんな農業です。


50年前からオーガニックでブドウを栽培し、ワインを作っている。ブドウ畑にクローバーとイラクサを混作し、1年に2回雑草を刈ってすき込んでいる。周辺の農家がヘリコプターで農薬を散布しているいる中、ひとりだけ無農薬に取り組んでいて「馬鹿だ」と言われたこともあるが、少しずつ賛同者が増えていった。すでに70歳を越えた老農であったが、古城が見えるブドウ畑で、遠く日本からやってきた見学者に、農業のやりかただけでなく、人としての考え方や、自分の生き方を話す姿に、」「ドイツには農業にも哲学があるんだ」と感動した。
ミュンヘンのファーマーズマーケット
パリのスーパーの野菜コーナーアメリカでもヨーロッパでも野菜が袋に入って販売されているのはめったに見ない。