
玉ねぎを切った断面
玉ねぎの原産地はカザフスタンやキルギスがある中央アジアで、シルクロードを通って古代エジプトや中国に伝わったとされています。
原産地は交易の要衝として栄えた地域ですが、内陸部で降水量は少なく、夏は暑く冬は寒くなる気候。玉ねぎはこの過酷な環境を、葉に水分を貯め、全体が丸まることで乗り切るように進化したようです。
写真は玉ねぎの断面を示したものです。私たちが普段食べている部位は、植物の構造のどの部分なのか。これを改めて考えてみると少々迷うかもしれません。
エケベリアという多肉植物があります。花びらのように規則的に並んだ肉厚な葉、そして手のひらに収まる小ぶりな姿が人々を惹きつけるようです。その形状が、葉に水分をためながら更に球形となったものが玉ねぎの構造です。
つまり、私たちが食するのは水分をため多肉化して太った玉ねぎの「葉」の部分です。
では茎はどこにあるのかというと、玉ねぎの「芯」の付け根部分が茎にあたります。茎にしては短く思えますね。ここに魚の鱗のようにして葉がついているので、このような葉を鱗片葉(りんぺんよう)と言います。葉なので光が当たると光合成をして緑色になりますが、上部が緑に変色している玉ねぎを見かけることがあるのはそのためです。
成り立ちから見ると、私たちが玉ねぎの皮だと思っているもの(玉ねぎを包んでいる乾燥した茶色の薄皮、鬼皮)は、重なっている葉の一番外側ということになります。
植物学において、体の一部に水分を蓄えることで乾燥する季節を乗り切るものを「球根類」といいます。球根類はどの器官に水分を蓄えるかによって細かく分類されており、葉に水分を貯める球根のことを「鱗茎(りんけい)」と呼んでいます。玉ねぎはチューリップやヒヤシンス、スイセンなどと同じ「鱗茎」に分類される球根なんですね。
黄玉ねぎに加えて、今週から赤玉ねぎの収穫も始まっています。玉ねぎの「葉」を一枚剥がして観察してみるのも面白いかもしれません。