時折、野菜セットをお届けしているお客様から「おいしい」というコメントをいただきます。
直接声を聞かせてもらえるのは農家冥利に尽きますし、生産者直販の特徴だと思います。
私たちはまず自分たちがおいしいと思う野菜作りをしています。成分分析で糖度が高く苦みが少ないという数字も出ていて、客観的な指標としても「おいしい」と感じてもらえる方が多いのではないかと感じます。
今日はその理由を「土地」から考えてみたいと思います。
〈「旨み」−−−掛川の土地で育つ作物の特徴〉
当園がある静岡県掛川市は旨みが特徴の深蒸し茶の産地です。
この地で育つお米も食味がよく、イチゴも土耕栽培だと甘みが増します。
和栗も隠れた名品です。
農産物のおいしさは生産者の工夫と努力の結果ですが、土地がもともと持っている力にも大きく依存します。
掛川市は静岡県西部を流れる天竜川、そして、中心部を貫く大井川の間に位置します。掛川自体には大きな河川がなく、この地域の土地は大昔に隆起したミネラル豊富な海底の土で出来ています。
この地の土壌は粘土質で、肥料の吸着力が強く、栄養は作物にゆっくり吸収されます。この土地が味に深みと旨味をもたらしてくれます。
〈野菜もおいしく育ちますが…〉
野菜を育てると強く実感するのですが、粘土質の土壌での野菜づくりはそれなりに大変です。
野菜は季節ごとに耕すし、根もの野菜は抜くのが大変です。粘土質なので洗っても土が落ちにくく、土が硬いので成長もゆっくりです。
静岡は歴史的に見て茶栽培が盛んです。掛川市も例に違わず、歴史の中で茶が基幹作物となりました。
葉を利用する永年作物である茶の方が土地に適していると言え、歴史的に茶産業を発展させてきた要因かもしれません。(茶の木は一度植えたら30-40年は抜くことがないと言います)
また、静岡は温暖で晴天率が高く、冬でも露地で野菜が育つというのも恵まれています。
作りやすさという点で野菜の大産地にはなりにくいと思いますが、おいしい野菜を作るのには適した土地と言えます。
〈この土地の味を野菜で味わってみてください〉
作物は光合成をしながら、その土地の水と空気と土から体を作ります。
太陽をいっぱい浴びて栄養分に富んだ土でゆっくり育ち、おいしい有機野菜が育ちます。
ワインやコーヒーには「テロワール」という農産物が生育する土地の自然環境を指す言葉があります。テロワールはその土地の特徴を反映した味わいを生み出す要素として知られています。
私たちの野菜を通じて「テロワール」を感じてみてください。