
6月にもかかわらず、すでに真夏のような日々が続いています。身体にはこたえますが、夏野菜をおいしく感じる気候です。高い気温と強い日差しの中で、キュウリがよく育っています。
当園では自根キュウリを出荷しています。「自根じこん」とは「自分の根で育ったこと」を意味しており、言い換えると「接ぎ木つぎきをしていないもの」となります。わざわざ自分の苗であることを表すのは、少々変な感じがするでしょうか。
野菜の栽培には「接ぎ木」という方法があります。普通、発芽した苗は「自根苗」と呼ばれ、その作物が自分の根から養分を吸収して育つものを言います。一方、接ぎ木苗は自根苗の茎を切って、そこへ別の植物の苗をつけものを指します。接ぎ木をする理由は、病気への抵抗性を高める、よく育つようにするなどが挙げられます。
インド原産であるキュウリは、元々地面を這って育つ作物です。高温多湿の日本では、風通しを良くするため、ネットを使いその株を空中に伸ばします。
もともとのキュウリの根には高いところまで水を吸い上げる力が十分に備わっていません。そこで、カボチャに接ぎ木をします。カボチャの根は水を吸い上げる力が強く病気にも強いので、キュウリをカボチャに接ぎ木をすると、大きくて形がいいキュウリがたくさん収穫できるようになります。カボチャと同じように皮は硬くなり、結果的に保存性が高まるというメリットもあります。
他方、自根のキュウリは接ぎ木のキュウリと比べると、水の吸い上げ力が弱く、病気にも弱いので収穫量は多くありません。皮が薄く傷つきやすかったり、ブルームと呼ばれる白い粉が表面について見た目が悪かったりします。
*ブルームはキュウリ自身から分泌される天然物質ですが、農薬と勘違いされてしまう場合があります
接ぎ木キュウリは栽培管理がしやすく、味がさっぱりして食べやすい特徴があります。自根キュウリは育てにくいですが、キュウリ特有の風味や香りを感じやすく、当園は好んで栽培しています。皮が柔らかく歯切れが良いため、生食はもちろん、漬物などにしてもお楽しみいただけるかと思います。