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4月第4週 ヨーロッパの有機農業

写真:ミュンヘンのファーマーズマーケット

 自然が相手の農業は思いどおりにいかないことが多々あります。有機農業はなおさらです。だから「なぜ自分は有機農業に取り組んでいるか」を何度も何度も考えます。
 そんな時に思い出すのが、かつて参加したヨーロッパの環境保全型農業の視察です。生産者を訪ねたりマルシェへ足を運んだり、充実した研修でした。

 もう十数年以上も前の話です。

 ドイツやフランスを巡る中で強く感じたのは、日本とヨーロッパでは有機農業の捉え方が異なるということでした。
 当時、日本の有機農業で重視されていたのは安心・安全、そして味が良いことでした。一方、ヨーロッパでは「環境保全のために持続的な生産が行われること」が強く意識されていました。

 ドイツのスーパーでは主食のジャガイモが、有機のものはそうでないものと比べて値段が7倍もしていました。
「それだけ高いのは美味しいからですか?」と聞いたところ「必ずしもそうではない」との答え。

 それでも購入する人々がいるのは「外部の力を借りないで、その土地が持っている最大限の力を引き出して育った魅力が有機農産物にあるから」。味が良くなることは目的ではなく結果であり、その土地が本来持っている力で作物が作られていることが重要とのこと。
 そういった哲学が生産者にも消費者にもあることに感銘を受けたものでした。

 農薬と化学肥料を使わないで育てることは、有機農業の手段であって本質ではありません。有機農業の本質は「その土地の光と水と空気で、その土地が持っている最大限の力を引き出して育ったという魅力」です。農産物を味わうことは、その土地を味わうことです。土地を理解し、作物を観察し、またその関係を注意深く見る。そして、人も自然の一部であることを知る…。

 生産者が有機農業に惹かれるのも、この農法に「人の生き方の原点」を感じているからではないかと思いました。
 私が目指しているのはそんな農業です。