丸まらない白菜を見たことありますか?
白菜は冬の食生活に欠かせない野菜ですが、日本に紹介されたのは明治になってからです。だから時代劇には白菜鍋や白菜の漬物は出てきません。
日清・日露戦争に従軍した農村出身の兵士たちが、中国大陸で食べた白菜の味を気に入って種を持ち帰ったのが日本での栽培の初まりです。
当時、兵士たりが持ち帰った白菜は丸まらない(結球しない)ものが多かったようです。白菜はアブラナ科の野菜と交雑しやすくて遺伝子の固定が難しく、結球するようになり広く普及したのは大正時代になってからです。
現在は品種改良が進み遺伝子も固定されて普通に栽培すれば丸まります。しかし、種まきや植え付けや追肥の時期が遅れると、写真のように結球しない(丸まらないこと)ことが起こります。

農業高校の教員だった時、よく学校を休む子がいました。生徒が休んだ時は、栽培管理をやっておくのですが、その日は明らかにずる休みだったので、その子が担当している白菜には追肥をしないで、2週間遅れで本人にやらせたことがありました。冬になって、みんなの白菜は丸まっているのに、その子の白菜は葉を広げたままです。
その白菜を前にして、「可能性があっても、やるべき時にきちんとやらないとしっかりとした結果を出すことが出来ないんだ。」などと話したものでした。
生徒との人間関係はできていたとは思うのですが、丸まらなかったことはよほどショックであったらしく、彼女は卒業文集にも「私の白菜は丸まらなかった。」と思い出を書いていました。
丸まらない白菜を見るたびに彼女のことを思い出します。
丸まらなかった白菜は春になると、菜の花を咲かせます。実はこれが普通の菜の花より甘くて美味しくて、上品な味です。
それを知ったのは教員を辞めた後です。
「予定通りの結果を出せなくても、あきらめないで続けていれば、それ以上に価値のある大きな花を咲くこともあるんだよ。」今ならそのことも伝えてあげられたのにな、と思います。


