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彼岸花の思い出

農業高校の教員時代、まだ20代だった2学期の9月の今頃の話です。
授業の始めの挨拶をして着席すると、ある女子生徒が手を挙げてこんな質問をしました。
「先生、今日、学校に来るときに彼岸花が咲いていました。彼岸花ってどうして葉がないのに花が咲くのですか?」

 その時、自分はその理由を知りませんでした。自分は小さいときから毎年彼岸花を見ていました。高校時代は生物が好きで、大学では農学部で園芸の勉強をしました、しかし、疑問を持つことはありませんでした。
 そのことに疑問を持ったその生徒の感性に、「なんか、すごいなあ、いいなぁ、」と妙に感心したことを、この時期になると、その女子生徒の顔と一緒に思い出します。



なぜ彼岸花には葉がないのか?

 そのあと調べてわかりました。
 実は葉はあります。でも、葉をつけるタイミングが他の植物と変わっているのです。
普通の植物は葉をつけながら茎を伸ばし花を咲かせます。ところが、彼岸花は最初に茎を伸ばし、次に花を咲かせ、花が終わった11月くらいから葉を出します。他の植物が枯れている冬の間にゆっくりと光合成をして、その栄養を球根にためて、その球根の栄養分で次の年に茎を伸ばして花を咲かせるというライフサイクルなのです。
  葉は冬を越すと消えてしまいます。 だから、9月に突然、土の中から茎が伸びてきて花を咲かせるように感じます。花と葉を同時に見ることはありません。葉のあるときには花はなく、花のあるときには葉はない。このことから 韓国では「サンチョ(相思華)」と呼ぶそうです。 「花は葉を思い、葉は花を思う」という意味だそうです。

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「彼岸花にはなぜ葉がないのか」そのことを質問された時に、「よくわからないので、次の授業の時までに調べておくね。」と言って、自分は予定していた授業を進めました。生徒の感性に感心しつつも、その話は授業前の雑談と思ったのだと思います。20代の自分には、予定していた授業を進めるのが精いっぱいであり、それが最善でした。
「本当だ、不思議だね。みんなどうしてだと思う。」と話しかけて、生徒からいろんな意見をだして予想をたて、黒板に書きだしてから、通常の授業に戻す。そして、授業の後で生徒が図書館に行って調べてみたくなるような授業ができていたら楽しかっただろうなぁ、そんな授業をしてみたいなぁと思えるようになったのは、それから10年以上たってからでした。

 もっとも、今だったらその場でネットで調べてしまえたりするのかもしれませんが・・・・・。