9月22日は秋分の日。お彼岸です。
秋のお彼岸には「おはぎ」、春のお彼岸には「ぼた餅」を食べます。
「おはぎ」と「ぼた餅」は基本的に同じで、違いは、秋の萩の花、春の牡丹の花に見立てて作られるところです。


秋に咲く萩の花は、小さな蝶形花が集まった姿をしています。粒あんの一粒一粒が、その萩の花を思わせます。


一方、春の牡丹は「立てば芍薬、座れば牡丹」と称される豪華な花。「ぼた餅」は大きく丸めたご飯に、重なる花びらのようにこしあんをまとわせ、全体でひとつの牡丹に見立てます。
つまり、「おはぎ」は集合体、「ぼた餅」は大輪の花というわけです。

ただし農業者の視点から見ると、本当の理由は“米と小豆の旬”にあるのではないかと思います。
秋は新米の季節。収穫したてのお米を餅になるまでつくのはもったいないので、「おはぎ」はお米の粒を残すように軽くつき、小ぶりに仕上げます。小豆も秋に収穫したばかりで柔らかいため、皮ごと味わえる粒あんに。まさに新米と新小豆を楽しむお菓子です。
ところが冬を越すと、お米も小豆も硬くなり風味も落ちます。そこで春の「ぼた餅」では、米をしっかりついて大きく丸め、小豆は皮を取り除いてなめらかなこしあんに仕上げます。これを「牡丹に似せた」と表現するのが、日本らしい粋な工夫でしょう。

また、「おはぎ」「ぼた餅」をお彼岸の供養のあとにいただくのも、昔の暮らしに合っていました。
甘いものが貴重だった時代、秋のおはぎは夏の農作業で疲れた体を癒やし、春のぼた餅はこれから始まる農繁期に向けて力をつける意味があったのだと思います。
今では保存技術の発達で、年中「おはぎ」を売る店も多くなりました。
ちなみに、私の実家では「ぼた餅」のことを「おはぎ」に対して「おぼた」と呼びます。食べ物への感謝がこめられた呼び名で、私は雅で粋だと思うのですが、妻からは「変だ」とからかわれます。
皆さんの家では「おぼた」と呼びませんか?
