しあわせ野菜畑の野菜は静岡県掛川市北部の土壌で育っています。この地域の土は粘土質なのですが、この土質は野菜を作るのにあまり向いていません。土は固くて重く、ニンジンや大根などは掘り上げにくいし、ジャガイモは形が無骨になりやすいです。また、雨が降ると固まりとなった土が長靴に付いてなかなか取れず、作業に苦労します。
しかし、粘土質であるため栄養分の吸着力が高く、できた作物の味には深みがあります。掛川市北部は古くから煎茶(深蒸し茶)の産地ですが、旨みや滋味が特徴である茶の生産には、粘土質の土壌が適していたのでしょう。そして、永年生作物である茶は一度植えれば30年から50年ほど収穫が可能であるため、何度も耕作する必要がないという点において、野菜などと比べると栽培上の利点があったのではないかと思います。

土が重いため、季節が変わるたびに耕作をする必要がある野菜の栽培には苦労しますが、茶と同様、旨みを強く感じやすいものになります。他にも、和栗、自然薯、メロン、お米などもよく栽培されており、豊かな土地であることは確かです。
掛川の土地は、第三紀層と言われる非常に古い年代に形成された地層が隆起してできています。古い方から倉真層群、西郷層群、掛川層群と呼ばれる地層に分かれ、倉真層群は地球に隕石が衝突して恐竜が絶滅した頃の地層、西郷層群は日本列島がユーラシア大陸から離れた頃に海底に蓄積された地層、そして一番上の掛川層群でも人類の祖先が誕生した頃の地層なのだそうです。
しあわせ野菜畑の第一農場(花屋敷農場)は、傾斜があった茶園を造成しなおして整備した圃場です。大きな機械を使って掘り出したときには硬い塊であった岩盤が、空気に触れて数日間でボロボロになっていました。それをならし緩やかな傾斜にして、農場が出来上がりました。それらは過去何百万年、何千万年といったスケールで出来上がった大地の上に成り立つものです。
「野菜を育てる」という言い方をしますが、長い地球の歴史の中で積み重ねられた自然の恩恵にあずかっているだけなのかもしれません。農業という自分たちの営みを考える時、そういった土地ができるまで長きにわたって積み上げられた歴史のことを思わずにはいられません。