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【9月第1週】身土不二

 有機農業とは、農薬や化学肥料を使わない農業のことです。「農薬を使わない」というのはわかりやすいですが、「化学肥料を使わない」とは、どういう意味があるのでしょうか。

 私たちは食べ物を胃や腸で分解してから栄養を吸収します。化学肥料はすでに分解されていて、水に溶けると植物はそのまま吸収できます。一方、有機農業で使用する有機肥料は動物や植物を原料にしたもので、人間の食べ物と同じように、土の中で微生物が分解してから植物に吸収されます。

 だから、有機農業では「土の中に微生物がいること」が欠かせません。土壌消毒や除草剤を使用しないことは、微生物を守るという点でも重要です。微生物がいることで、それを食べる小さな虫が生まれ、さらにそれを食べる昆虫や鳥が現れ、畑の中に食物連鎖が広がっていきます。有機農業はその連鎖のきっかけなのですね。

 「身土不二」という言葉があります。人の身体と土地は切り離せない、旬のものをいただくことが健康につながる、という考え方です。農産物を単なる栄養源と考えれば、有機農産物よりも安価であったり、食べやすかったり、栄養的にも優れているものも多くあるでしょう。しかし、有機農業にはそれ以上の魅力があります。

 植物は光のエネルギーを利用して二酸化炭素と水から炭水化物を作り、根から吸収した栄養分をもとにアミノ酸やたんぱく質を合成します。そうしてできた食べ物を私たちが口にすることで、体が作られていきます。

 1960年代以降の工業化・都市化の進展によって食料需要の変化が生じ、それに対応するため特定の作物や食料の増産が行われました。これによって、複合経営的な農業から単作経営が中心となり、大規模な施設化・機械化、そして化学肥料や農薬の使用が進みました。また農産物の輸入も増加しています。おかげでいつでも色々な野菜が食べられるようになりましたが、旬や季節、土の豊かさについては見過ごされがちです。

 有機農業の魅力とは、単に「農薬や化学肥料を使わないから安心安全」ということではなく、人が自然とつながって生きていることを感じさせてくれる、その豊かさにあると思っています。