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【8月第4週】親の意見と茄子の花は千に一つも無駄がない

 七・七・七・五の音数律であるこの言葉は、「ナスの花が咲くとすべて実をつけるように、親が子を思って忠告することは必ず役に立つ(から親の意見をよく聞きなさい)」という昔の教えです。よくよく考えてみると、少し難しい表現だと思うのですが、皆さんはどう思われますか。「親の意見」はわかるとしても、「茄子の花には無駄がない」とはどういうことでしょうか。

 結論から言うと、「茄子の花には無駄がない」のはナスが自家受粉植物だから、ということだと思います。昆虫に受粉を媒介してもらう必要がなく、花が一つ咲けばほぼ実ができるため、花に無駄がありません。ナスの花は下向きに咲いています。袋状になった雄しべの中に花粉がたくさんあり、雌しべに向かって穴の中から花粉が落ちると、雌しべの柱頭にくっつき受粉します。すると実ができ、成長してナスとして収穫されるようになります。

 自家受粉ができるため昆虫の力は必要ありません。昆虫に来てもらうための蜜を出さないし、もし出したとしても、下向きに咲くから蜜はたまりません。花粉も袋の中にしまわれているので、花粉が目的の虫もやってきません。何だかたくましいような、寂しいような。

 とは言え、雌しべの長さが栄養状態によって長くなったり短くなったりして、時には雄しべより短くなることがあるので「花が咲くとすべて実をつける」というわけではないのですが…。ともかく、ナスは非常に効率よく受粉できるようになっています。このような意味で考えると、「茄子の花には無駄がない」と言えると思います。

 ただし、ナスが受粉するために必要な条件がまだあります。それは風です。ナスが受粉する上で大切なのは、花粉が雄しべの袋から絶え間なく落ちることです。花粉には粘性があるので、下向きなだけでは落ちてくれません。風が吹いて枝が揺れることで花粉がこぼれ落ちます。だから、ナスは栄養状態が良くて雌しべが長くなっていて、風が吹いていれば受粉ができ、実をつけます。栄養状態を良くしておいたら、あとは風が吹くのを待つだけです。

 8月までピークを迎えていたナスは「切り戻し剪定」をして、一旦落ち着いています。夏はあまりに暑いので、長くなった枝を切り、株を少し休ませます。暑さが落ち着いて元気が出てきた頃、秋ナスがまたたくさん出回るようになります。