
写真:さまざまな品種のラディッシュ
春、ラディッシュの収穫が始まりました。適度な気温と雨にさらされ、身にハリがありながらも柔らかく育っています。
英語でRadish(ラディッシュ)は、二十日大根のラディッシュだけでなく、「大根」を指して用いられる場合があります。どうやら両者は何か関係があるようです。
しかし、ラディッシュと大根とでは見た目も大きさも違います。かつて私(大角)は、大根をRadishというのは無理があると思ったものでした。皆さんはどうですか。
上部の写真は当社で栽培しているラディッシュです。中央下の丸い形がよく見かける二十日大根「赤丸」、右側が「キスミー」、左側が「白鷺(しらさぎ)」という名前です。
「白鷺」は10㎝くらいで、言ってみれば極小の大根です。あるとき白鷺を作ってみて「大根はラディッシュだったんだ」と腑に落ちました。その理由をお話しします。
まず、野菜には原産地があります。
大根の場合は地中海沿岸から中央アジアが原産と言われていて、もともとは小さく、そして赤、緑、紫、黄、黒などいろいろな色のものがありました。
植物学では、原産地よりも伝播していった地域で栽培が盛んになり多様性が増すことを二次的分化といいます。
中国に伝わった大根は紅芯大根や青長大根、赤大根など様々な色や形の大根となりました。赤大根を初めて見た時にはびっくりしましたが、大根がラディッシュだと考えると不思議ではありません。
弥生時代、ラディッシュは中国を経て日本に伝わりました。
大根が日本に定着しその風土に馴染んだ結果、日本では色素を作らず白く大型化しました。
つまり私が栽培したラディッシュの白鷺は、いってみれば大根の原型であり、大根はラディッシュが長い期間を経て日本に定着した姿だったのです。
現在、大根の生産量、消費量とも世界の中で日本が1位です。
外国にも白い大根がありますが、日本のように大きくはなく、その大根でおでんを作ってみてもあまり思い描くような風味にはなりません。大根のあの味は、やはり日本で育まれたもののようです。
大根を使った和食は食文化として世界に知られるようになり、最近は外国でも英語でDaikonと表記されることが一般化しているようです。