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4月第5週 / 5月第1週 シルクロードの村で考えたこと

写真:1999年、オアシスの大豆畑にて(筆者)

 どんな農業を目指そうかと模索していた30歳代前半の1999年、私は中国少数民族の衣食住に関する学術調査隊へ参加しました。現地における「自然と人間の関わり方の知識」を農業の視点から記録するというのが調査の目的です。
 シルクロードのオアシス都市をめぐる旅で、ウルムチ、トルファン、カシュガル、ホータンといった中国の西域にあたる人々の暮らし、これらを体験してきました。

 オアシスと聞くと、砂漠の真ん中に湧き水があり、緑に囲まれた小さな集落が交易に頼って暮らしているというイメージですが、私が見た実際のオアシスはまったく異なった様子でした。
 小麦、トウモロコシ、綿花、大根、ジャガイモ、リンゴ、ブドウ、ナシなど多くの作物が栽培され、牛、豚、羊、鶏といった家畜も飼育されています。見渡す限りの水田が広がる風景もありました。砂漠を囲む巨大な山脈からの雪解け水によってたくさんの川が流れていて、これらの恩恵を受けたオアシスは大農業地帯となっていました。

 ある日訪れた村で、私たちは昼食の招待を受けました。食事がとても美味しく楽しい時間でしたが、何より心に残ったのは、食事の前に村長さんが話してくださった挨拶です。

「遠い遠い日本から、砂漠の中の小さな小さな村に来ていただき、本当にありがとうございます。何もない村ですが、本日ご用意したお米もパンも、野菜や肉や果物も、そしてジュースやお茶やお酒も、すべてこの村で育ったものからできています。」

 この言葉を聞いたとき、私はとても贅沢だと思いました。

「豊かな食というのは、まずはその土地の光と水と空気と土から生まれる素材に目を向けていくことなのかもしれない。」
「その食材が育った物語を伝えられるような、そんな農業をやってみたい。」

シルクロードのオアシスの村でそんなことを考え、それが今のしあわせ野菜畑につながっています。