伝えたいのは「野菜の物語」

農業高校の教員時代に、大学の農学部が企画した、 かつてのシルクロード、「西域」と呼ばれた中央アジアの オアシス都市での衣食住に関する学術調査隊へ参加させていただきました。

オアシスというと砂漠の真ん中に泉があり、その周辺に小さな集落があるというイメージですが、現実のオアシスはとても大きく、巨大な山脈からの雪解け水を使ってたくさんの農作物が作られていました。  

ある日、訪れた村で私たちは昼食の招待を受けました。
とてもおいしく、楽しい食事会でしたが、それ以上に感動したのは食事の前の村長さん挨拶でした。

それは「遠い遠い日本から、砂漠の中の小さな小さな村に来ていただいてありがとうございます。何もない村ですが、本日用意させていただいたお米もパンも、野菜や肉や果物も、ジュースやお茶やお酒もすべてこの村で出来たものです。」というものでした。

自分はとっても贅沢だと思いました。日本人は「選りすぐり」が大好きです。全国各地から選び抜かれた食材で料理することが、こだわりとされます。

しかし、考えてみると、それはバブルの時代にロシアからキャビアを、フランスからフォアグラやトリュフを空輸して有り難がっていたのと、あまり変わらないのではないかと思いました。

シルクロードのオアシスの町で、「本当の食のこだわり とは、その食材が育った物語を知ること、伝えることではないかな」、そんなことを考えました。

そんなことがきっかけで、「少量多品目有機野菜の生産直売」をすることにしました。