
写真:ズッキーニの花付近を飛ぶハチ
野菜という作物において、私たちが食べる箇所はさまざまです。根、葉、茎、実、種など、色々な可食部があります。6月、しあわせ野菜畑でもズッキーニがよく取れるようになりました。私たちがお届けするズッキーニは実の部分(果実)にあたります。
静岡では主に4月から7月がズッキーニの栽培適期にあたります。ズッキーニが花を咲かせ、その果実が大きく育つには受粉が必要です。ただ、この時期の静岡にはズッキーニの雄花の花粉を雌花に運ぶ虫が少ないため、人間による人工授粉がよく行われます。
もう少し暖かくなってハナアブ、ミツバチ、蝶などがたくさん訪れてくれ交配してくれるとわざわざ人工授粉をする必要はなくなります。しかし、最初の頃は人口受粉をしないと実がつきませんので、朝午前10時頃までに人工授粉をすることがこの時期の日課となります。

さて、ズッキーニの人工受粉をしているときに思い浮かべる話があります。ドードーとカルバリアの木の話です。
ドードーはかつてインド洋のモーリシャス島に住んでいた、飛ぶことができないおよそ1mの鳥。人を恐れなかったこの鳥は大航海時代に人間に捕えられ、船の食料となってしまいます。また人が島に持ち込んだ他の動物に食べられたり、人が住むために森が切り開かれたことで生息場所をなくしたりして、約300年前に絶滅したとされています。

このドードーが食べていたのが、カルバリアの木の果実。果実の中にある種は、特別な構造をしていて、ドードーの胃の中で傷がついて糞と一緒に排泄され、初めて発芽可能だったといいます。
ドードーと共存していたカルバリアの木は、ドードーが絶滅した後に新たに芽を出すことができなくなり、同じように消えゆく運命を辿ったとのこと…。

実際のところ、このエピソードには諸説あるようです。しかし、複数の生き物が自然の中で共存関係にあった場合、その生き物のいずれかがいなくなれば、その関係性に何かしらの影響を与えることは想像に難くないでしょう。
野菜も生き物で、自然の中で育っています。他の生き物とどのような関係を結んでいるのか、生態系の観点から眺めてみるのもまた面白いのではないでしょうか。