人生時計とマラソン

人生時計の話をご存知ですか?

自分の年齢を3で割ると、人生を一日にたとえることができるそうです。
72歳を3で割ると24時、定年の60歳を3で割ると20時に当たります。
時間の感覚は人それぞれで、24時を過ぎても元気な人も多いし、20時頃からの方が楽しいという人もいます。
自分は47歳の時に農業を始めました。人生時間に例えると15時40分、「微妙な時間だけど、遅くはない」と思いました。

今、しずおかマラソンに向けて走っています。
マラソンの場合は自分の年齢を2で割ります。
10km(20歳)時点では、すでにトップと差がついていますが、体力も気力もあって楽しく走っています。
20km(40歳)前後になると、気持ちはあるのに体がついていかなくて、少しずつペースが下がっていくのが自分でもわかります。
30km(60歳)前後に壁があって、一度歩くとなかなか走り出せなくなります。こんな時には応援の声がとっても嬉しく、一緒に走ってくれる人がいると、とても助かります。

一番大変なのは、そこからゴール42.195km(84歳)までです。
なかなか前に進めません。
しかし、不思議なことに、この区間は走っているだけで褒められます。疲労感と同時に達成感もあって、しばらくすると「また、やってみようかな」と思ったりもします。

最後の区間を笑顔で過ごすことができるかどうかは、この時点ではなく、もっとずっと前に決まっているような気がします。
人生の場合は「また」はありません。
できるならば、最後の区間を楽しく、充実感を持って走りたいし、それが今やっている農業の先にあってくれたらと思っています。

 

( 2015年2月1日 静岡新聞 農業欄 こだま )

習わしに託された思い

1月11日は田打ち講(たぶちこう)の日です。田打ち講は、日の出前に田んぼに行って新年の豊作をお願いする、静岡県西部地域に伝わる農家の習わしです。

ススキを5~7本、萩を3本を重ね、これに縁起物の松竹梅と和紙で使った御幣(ごへい)を添えて束ねたものを田んぼに立てます。豊作の願いをイネ科のススキで表し、荒れ地を耕して田んぼにさせていただいたことへの感謝を野の植物である萩で表わしているそうです。倒れてしまうとお米が台風などで倒れてしまうとされているので、しっかり立てます。その後、お正月の平餅を切ってお供えをして豊作を祈願します。

田打ち講を行うのは、その家の主人(家長)と跡取りの長男です。束の数も、父と長男なら2柱、男の孫がいれば3柱となります。この時期の日の出前はとても寒く、小さな頃は「弟や妹は寝ているのに、何で自分だけ寒い田んぼに出ていくのかなぁ」と辛かったのですが、そのような営みの中で親から子供、子供から孫へと農業が継続されてきたのだと思います。

そんな田打ち講も近頃ほとんど見られなくなりました。農業後継者が減っていく中で、農村風景や農村文化がなくなりつつあります。風景は人の手が入るからこそ美しいのであり、自然のままに放任すると景色は荒れます。農村文化も同じことが言えると思います。稲作経営に関する情勢は大きく変わりつつあり、田打ち講をそのまま継承することは難しいのですが、そこに託されていた思いは大切にしたいと思います。

(2015年1月11日 静岡新聞 農業欄こだま)

あけましておめでとうございます。

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あけましておめでとうございます。

寒い日が続いていますがいかがお過ごしですか。寒風の中でも、少しずつ大きくなっていく野菜たちに、改めて生命(いのち)の力強さを感じています。寒さに当たった野菜は甘みが増してとてもおいしいです。食することで寒い冬を乗り越えられるような、おいしくて元気な野菜をお届けしたいと思います。

 

さて、しあわせ野菜畑では、昨年度、有機JASを取得しました。これは、農林水産大臣が定めた品質基準や表示基準に合格した農産物につけられるもので、この認定がされていないと有機肥料を使って無農薬栽培をしていても、有機野菜とかオーガニックと名乗ることができません。今まで以上に品質管理を徹底し、安全で安心、そして美味しい“本物”の有機野菜をお届けしたいと思います。

 

また、本年度は新しい農場が完成します。高台にあって日当たりがよく非常に見晴らしのいい農場です。畑の見学会を実施したり、収穫体験ツアーを企画したり、自分で野菜を育ててみたいというお客様のための農業体験農園を開設するための準備を進めています。

野菜作りを通して皆様にしあわせをお届けできるように、スタッフ一同、力を合わせて頑張っていきたいと思います。

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

土地の恵みを食する「しあわせ」を提供したい。

掛川10の流儀2

掛川商工会議所が発行する小冊子「掛川10の流儀」で紹介をしてくれました。

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この土地の恵みを食べられる、という幸せ。

 

─ ご実家はお茶とイチゴの専業農家だったそうですが、なぜ野菜を?

 

ここ西郷地区の土壌は粘土質で、肥料の吸着力が高く、お茶もイチゴも味がとてもいいです。野菜を育てたら、野菜本来のおいしさが楽しめるような味の濃いものができるのではないかと考え、野菜で農業の可能性を追求したいと思いました。

 

─ 何か転機になるような体験は?

 

静岡大学農学部の調査団に加わって、農と食のあり方を調べるために中国のシルクロードに行きました。歓迎会で「ここは何もないところですが、テーブルの上のある野菜、果物、お米、飲み物はすべてこの村で採れたもの、できたものです」という村長さんの挨拶がありましてね。本当の贅沢とはこういうことだな、と心から思いました。世界各地や国内の有名産地から食材を取り寄せるのではなく、自分たちで作ったものを自ら食することこそが真の豊かさではないか、と思ったのです。

 

─ 農業の魅力は、地域の魅力でもあるんでしょうね。

 

食することは、生きることであり、農業は命を育むことです。お客さまが「美味しかった。食べて元気になった」と直接伝えてくださるのも、生産直売ならではのことです。「身土不二(しんどふじ)」という仏教の言葉がありますが、これは、その土地で採れたものを食することで健康になれるということです。ただ、地元の良さは地元には分かりにくいものです。近所の人が野菜を分けてくれるようなことがまだ普通に行われている掛川では、その良さには気付きにくいかもしれませんね。今はお客様の6割が通販ですが、有機野菜の美味しさ、掛川の野菜のおいしさは、外からのほうが分かりやすいのかもしれません。ブランド化することで、地元のお客様にも掛川の野菜のおいしさに気付いてもらい、より多くの野菜を地元向けに提供できるようになりたいと思っています。

 

─ 農業高校で教員をなさっていたのですね。

 

農業の大切さ、楽しさ、そして可能性を伝えたいと思っていました。シルクロードから帰ってから、いろいろな野菜を作り、その野菜を食べるところまでを授業にしたところ、生徒たちが楽しみながら真剣に取り組んでくれ、こういう体験を通じて、将来農業をやりたい若者が生まれるのではないかと考えました。ただ、農業の大切さや楽しさは授業を通じて感じてもらえても、農業の可能性についてはなかなか伝えることができません。それならば、自分自身で農業が魅力的な産業であることをやって見せようと思い、教員から農業者になりました。

 

 

─ 地産地消や自給的な農業は、少量多品目生産になりますが。

 

以前の農家はたいていそうでしたね。自分の家の周りで育てたもので食事を作り、鶏も飼っていました。まさに身土不二でしたね。自分で作ったものを食べるのがいちばん幸せだと思います。いつも旬のもの、そのときにあるものを食べ、季節に合わない野菜は食べませんでした。そういう食のあり方をお客様とともに実現したいのです。その一環として、農業体験農園を始めました。自らの手で野菜を育て、収穫した野菜を調理し、家族においしく食べてもらいたい、と考えている方に、この土地の恵みを食する幸せを体験していただきたいです。

 

─ 掛川の農業の今後をどんな風にみていますか?

 

農業後継者が減っている中で、里山的な風景、農村的な景観がなくなりつつあります。自然のままに放任すると景色は荒れます。風景は人の手が入るからこそ美しいのであり、残したいと思う景観を残すことも農業の大切さや楽しさだと思います。いまの若い世代には、農業が魅力的な産業だと思っている人がいるので、そういう方々を雇用して経営を拡大したいと考えています。食に直結していると考えると、農業は案外女性向きなのかもしれませんね。

 

掛川の農 掛川10の流儀1

学生たちがくれた元気

昨年、静岡県農業法人協会へ加入させていただきました。農業をやっている会員相互の交流や農業経営上の課題解決のための研究・検討などに取り組んでおり、その活動のひとつである販売支援事業(アグリマーケティングプロジェクト)を本年度受けることができました。静岡県立大学経営情報学部岩崎ゼミとの連携のもと、課題を抱えている法人に学生が出向き、課題解決に向けたコンサルティングを実施するもので、来年度本格的に始める農業体験農園(野菜つくり教室)のアイデアを依頼しました。

「社会に出ていない学生の意見が、はたして参考になるのかなぁ」という気持ちがなかったわけでもないのですが、実際に学生と接してみて、その感性にとても刺激を受けました。大学の先生から「今の学生は社会への参加意識も高く、そのための勉強もしています。これを生かすかどうかは大人たち、社会の意識の問題です。」というお話をいただきましたが、その通りだと実感しました。

それ以上に良かったことは、大学生が自分の思いやアイデアを話す姿から元気をもらったことです。まっすぐに前を見ているということはこういうことなんだなぁと思いました。かつての自分にもあったものであり、今でも前向きにやっているつもりでしたが、目線がいつの間にか下がっていることに気づかされました。農業体験農園に限らず、新しいことをする時には問題点が出てきて、目先のことに追われがちです。そんな時でも大切なのは、夢を語りワクワクしながら取り組む姿勢であり、前を向いて、最初の思いを忘れないでブレないことだと教えてもらいました。機会を与えてくれた農業法人協会と大学生に感謝しています。

 

2014年12月21日 静岡新聞 農業欄 こだま

教え子の結婚式

結婚式

10年前に小笠高校で担任をした教え子の結婚式に出席しました。

自分の中ではいつまでも高校生の彼女たちが、
素敵な女性に変身して現れ、でも話すのはあの頃の続きっていう感じで
とても楽しい時間でした。

改めて、教員っていい仕事だったなあと思うし、
もしかしたら教え子の結婚式もこれが最後かなと思ったりして少しさみしい気もしました。

教員時代はとても楽しく充実していて
そのまま続けようかとも悩んだのですが、
自分自身の夢であった農業自営をやろうと一歩踏み出すことができたのは、
高校生の彼女や彼らが、部活動や進路で夢に向かって一生懸命に努力して、
泣いたり笑ったり喜んでいる姿がとてもまぶしく見えて、自分も頑張ろうと思えたからでした。

この時に担当したクラスや授業で接していた生徒たちが本当に良くて、
教員としてやってみたいなと思っていたことをやれてしまったような気がしたのも理由のひとつです。
本当は教員として、まだまだ未熟でもっとやらないといけないことが残っていたとも思うのですが、
今こうして、農業経営(アグリビジネス)をやれているのも、彼女、彼らたちのおかげであり、感謝しています。

 

アグリトップマネージメント

静岡県農林課が主催する農業経営者の勉強会、アグリトップマネージメントに参加しています。

全10回の講習会や視察研修会があるのですが、本日の講師は松下政経塾の塾頭の古山和宏氏でした。

テーマは「リーダーに求められている資質」

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・・・・・・これって、松下政経塾で講義している内容と同じなんだよなと思うと

正直、自分が聞いていていいのかなと思ったりもしたのですが、

内容はとっても基本的なこと、指導者の条件っていかに遇直に基本をやり続けるかということだと教わりました。

 

 

おいべす様

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11月20日は恵比寿講、うちの地域では「おいべすこう」と言います。恵比寿様は商売の神様ですが、五穀豊穣の農業の神様でもあります。

商売や農業を見守る恵比寿様(おいべす様)は、神無月でも出雲に行かず生活を守ってくれていますが、そろそろ神様たちが帰って来るので、神様達の留守中の労をねぎらうのが「おいべすこう」です。

いつもは食器棚の奥など、他の神様達の目につかない所でお祀りしている恵比寿様を明るい場所に出して、桜ごはんやお餅などと一緒に、葉つきの大根と水を入れた器の中で泳いでいるメダカをお供えします。

お桜ごはんはお米に醤油、塩と酒を加えて炊き上げたもので、お祝いごとや仏事の時にも作ります。
えびす講のお餅はうるち米で粉をたくさんふるって作ります。そのため、食べると白い粉が口に付くのですが、これが大切で、戻ってきた神様達に「私達がいない時にごちそうを食べていたんだろ?」と聞かれたときに、恵比寿様は白くなった口の周りを見せて、 「めっそうもありません。何も食べていないので口の周りに白いカビが生えてしまいました」と言うそうです。神様なのに親近感がわく言い伝えです。

生きたメダカを器の中に水を入れてお供えするのはなぜだか知りません。「小さな魚が元気に大きくなりますように」というお願いなのかなと思いますが、どうなんでしょう。

絶滅危惧種となってしまったメダカですが、自分の地域にはたくさんいます。メダカが減ってきたという話を知った時に「そうなると、おいべすこうの時に困るよなぁ」と思ったものでした。
いつまでも、おいべす様にメダカをお供えできるような環境を守っていきたいものです。

( 2014年11月16日 静岡新聞 農業欄 こだま )

 

 

 

農業法人と社会貢献

白血病等の患者さんが元気になっていただくことを目的に活動している「静岡骨髄バンクを推進する会」というボランティア団体があります。平成4年に発足したのですが、自分は立ち上げメンバーの一人です。

当時は白血病はまだ不治の病と考えられており、骨髄バンクといってもほとんど通じませんでした。そのような時にライオンズクラブやロータリークラブを通して会社の社長さん達が力を貸してくれました。活動資金としての寄付だけではなく、休みの日に出てきてくれてビラ配りをしたり、講演会の手伝いをしてくれました。

「会社の利益にならないのに、社長さんたちが何で手伝ってくれるのかな」と思いつつ、こういう人達が支援してくれるのだから、やろうとしていることは間違っていないはずだと勇気づけられました。現在は事務局を静岡県総合福祉会館内において、県内の行政や医療機関と一体となって活動しています。

自分は2009年に農業を始め、2012年に会社(農業生産法人)としました。会社といっても、日々の栽培管理に追われていて、自分のことで精一杯なのですが、会社の存在価値として社会貢献を意識できる会社でありたいと思います。

10月は骨髄バンク推進月間でした。会では静岡駅でチラシ配布をしたり、骨髄ドナー登録会をいつもの月より多めに開催しました。自分自身は近年は参加できていないのですが、今までに出会ったボランティアの仲間達や、お世話になった社長さん達のことは自分にとって大きな財産になっています。個人として、そして会社として、小さなことから地域社会へ貢献できるような取り組みをしたいと思っています。

( 2014年11月2日 静岡新聞 農業欄 こだま )

農業への先入観の転換

いつか農業をやろうと思いつつ、その一歩が踏み出せないでいた頃、空を見上げながら露天風呂に入ると考えが整理できるような気がして日帰り温泉によく行きました。そして、サウナの後の水風呂に入りながら、「農業も水風呂も同じかもしれない。入る時には勇気が必要だけど、入った方が心にも体にもいい。最初は冷たいけど、慣れてくると気持ち良くなってくるに違いない」と思ったものでした。

自分の中では方向性が決まっていて、背中を押してくれるものが欲しかったのですが、農業は大変なものという先入観があったのは確かです。

先日、久しぶりに日帰り温泉に行って水風呂に入っていたら、子供たちが「わぁ、気持ちいい」と言って入ってきました。自分はとってもショックでした。「そうか、水風呂も農業も慣れるまでは大変だと思っていたから苦労したんだ。冷たくて気持ちがいいと思えば、最初から楽しむことができたんだ。」子供たちの姿を見てそんなことを思いました。

専業農家の長男である自分は、農業が好きだという気持ちを持ちながらも、「農業は大変な仕事だ」という概念を植え付けられています。「農業って難しいよね」という人の方が圧倒的に多いのも事実です。苦労は美徳という価値感の世代でもあり、農業は大変でなくてはいけないような気がしていて、わざわざ自分で山を作って苦労して登っている気がします。「農業は楽しいし、難しい仕事でもない。そんなふうに考えた方がうまくいく」、最近はそう思います。

 

( 2014年10月19日 静岡新聞 農業欄 こだま )

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